Z1000
長いこと仕事してますと様々な故障に出くわします。
その中でも私にとって前例のない、叉はレアな故障例を発表するのがこの『珍故障』コーナーです。
まず一発目、カワサキZのアイドラーの故障。中のショック吸収のゴムが剥がれるというのはZでは比較的よく見られる症状。しかしこのアイドラー、(シリンダーの前側のやつ)なんとカムチェーンがきちんとギヤのところに噛んでおらず、外れた状態で使われていました。アイドラーのギヤ部の横が異常に減っています。
オイル消費が激しいとのことで入庫したZ1000だったのですが、とんでもない爆弾を抱えていました。カムチェーンも擦れていたところは若干摩滅しています。このまま放置していたらカムチェーン断裂というようなとんでもない故障を引き起こしていたかもしれません。で、何でチェーンが外れていたか。それは、パッキンの剥がれ方等から推測すると、近い過去にオーバーホールされていて、そのときアイドラーのシャフトを組み、それを固定する為の四角いゴムのダンパーを組み込み忘れ、それでシャフトがガタガタした状態で作動させていたためと判断しました。分解していくときにそこのゴムダンパーが無いことに気が付いてましたので、それが原因と考えてまず間違いはないでしょう。
長年(6年)ボデーカバーをかけた状態での保管で、久々にバイクを動かそうとした車両(ゼファー1100)です。あまりの長期間の放置だったため、エンジン右側のカバーを外し、クランクシャフトに直接メガネレンチをかけて回してみました。すると、90°くらいでしょうか、それくらい回したところでいきなり何かに当たる感触でクランクが回らなくなります。この車両のオーナー様はレーシングキャブレターのファンネル仕様で乗っておられまして、その状態での長期保管でどうやらバルブが錆び付いてしまったようです。写真撮影する前にカムホルダーを外してしまってしまい、今イチ信憑性に欠ける写真ですが、とんでもないバルブクリアランスでした。そう、クランクが回らなかったのは、リフトした状態で錆びてバルブガイドとバルブが錆びついたためのようです。リフトしたバルブとピストンが衝突してしまっているんですね。でもこれくらいだったらバルブとバルブガイドだけで修復できます。しかしあと、もう1点、とんでもない故障をこの車両は抱えていたのでした。
それがこのシリンダー。こんなになったらもうオーバーサイズピストンを使用して復旧です。シリンダーを外したらサビの程度を確認し、今度使用するピストンのサイズを決定します。0.5オーバーくらいでいければ良いのですが。
しかし、今回のこのエンジンでラッキーだったのは皮肉にもバッテリーが死んでいたことでしょう。元気なバッテリーが思いきりよくクランクを回してくれていたらコンロッド等も損傷させていたかもしれません。
※今回は持ち込みノンオーバーホールと言われるエンジンから取り出しました。
こんなのはZではよくありますね。
コイツはえらく軽く抜けました(笑)
実動エンジンからこんなのが出てきました。
折れたピストンリングです。
こんなのでは調子良いはずはないですね。
バルブガイドの圧入が緩かったのでしょう。ガイド本体が上下に動き下穴を拡大しながら削れていき、ガイドがスッポリ落ちてしまいました。(サークリップも入ったまま、、、)